T中に団体戦で負け、僕の中学卓球は終わりを迎えました。
それでもWエースのP君やE君たちには、
まだ個人戦が残っていました。
僕は出場がないので、みんなの応援に回ります。
改めて見る県大会は、とにかくレベルが高い。
みんな勝てるかな。勝てるといいな。
そんなことを思いながら試合を見ていました。
結果は、2回戦や3回戦で敗退。
4〜5人エントリーしていましたが、半分は1回戦負け。
一番良くても3回戦止まりでした。
僕はP君やE君と何度も勝負しましたが、
一度も勝てたことはありません。
そのWエースでさえ、この結果。
ヤバい。これが県大会か。
そういえば、O君はどうなったのかな。
以前対戦して、僕がボコボコにやられた相手です。
彼は僕のことなんて覚えていないと思うけど、
一度戦ったこともあるし、
なんとなく応援したくなりました。
さすがO君。順調に勝ち上がり、ベスト8。
その時でした。
トイレから戻ると、会場がどよめいています。
「おおぉぉぉぉ……」
何が起きたんだ?
目に入ってきたのは、劣勢のO君でした。
記憶は曖昧ですが、6点か7点差をつけられていたと思います。
県ナンバー1が、7点差のビハインド?
「よーし!ナイスボール!!!」
甲高い声が会場に響きます。
相手は……N中のT?
聞いたことがない名前でした。
それもそのはずでした。
T君は、まだ1年生だったのです。
4ヶ月前までランドセルを背負っていた少年が、
県ナンバー1を相手にリードしている。
そんな光景、当時の僕には信じられませんでした。
「よーし!ナイスコース!!!」
そのまま流れは変わらず、O君はなす術もなく敗退。
ベスト8で姿を消しました。
会場には、明らかな衝撃が走っていました。
あのO君が負けた。
今でこそ、年下の選手が年上を倒すことに驚きはありません。
でも当時は違いました。
1年生が3年生を倒すなんて、
ほとんどありえないことだったんです。
しかも相手は県ナンバー1。
その後もT君は勝ち進み、決勝へ。
そしてそのまま優勝しました。
決勝の相手も、1年か2年の下級生でした。
つまり、引退をかけた3年生が決勝にいないという、異常な大会でした。
忘れられない場面があります。
O君の渾身の攻撃を、台から少し離れたT君がカウンター。
そこからの打ち合いを制した瞬間、空気が変わりました。
あ、次元が違う。
僕はそう感じました。
世の中には、上には上がいる。
そして、自分が普通だと思っていることは、
決して普通ではない。
そのことを、この大会で思い知らされました。
その後のT君を詳しく追ったわけではありませんが、
県外の強豪校に進み、
高校でもかなり強かったと聞きました。
これが、僕の中学卓球の思い出のすべてです。
派手な結果は何もないけど、確かに“衝撃”だけは残りました。
そしてこのとき感じたことは、自分の中に残り続けています。
だから今も、自分の“普通”を疑うようにしているのです。
それにしてもT君のプレイは異常でした。
僕が今まで見てきた卓球はなんだったのだろうと
根底から覆されたような圧倒的な強さ。
3年生みんな唖然としてたあの空間と
会場のどよめきを僕は忘れません。


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