父のロマサガのデータを消した夜

青春回想録

月曜日、学校から帰ってきてカバンを放り投げ、
夕飯を食べて、一目散にゲーム部屋に行く。

「今日はどこまで、やろっかな~♪」

ロマンシングサガのカセットを
スーファミ本体に入れる。

電源オン。

テレビの画面が灰色。
接続不良だ。

カセットの接続部に
ふ~っと息を吹きかけて

もう一度、電源オン。

え?

僕のアルベルトのデータはある。

父のバーバラのデータがない。

消えた・・・

これ、当時は普通にあった。

ドラクエでデータが消えた時に
【おきのどくですが、冒険の書は、消えてしまいました】

これを見て、何度キレたことか。

スーファミのロマンシングサガの場合は
何事もなかったように消えてるだけだった。

信じたくなくて一度電源を切った。

そして再度付けるとアルベルトしかなかった。

ヤバい。〇される。

今の若い子には信じられないかもしれないが
ゲームデータが消えるというのは日常茶飯事だった。

僕の父は当時、単身赴任していて
週末にロマンシングサガをするのが
何よりの楽しみだった。

わざとじゃないんだし、謝ればいいじゃんと
思うかもしれない。

でも謝って許される空気感じゃないのだ。

(わかりますよね?データ消したらマズイの)

それくらい父のゲームデータが消えるということは
僕の中であってはならない一大事だった。

「金曜日までに元のところまでやるしかない。」

そして誤魔化すしかない。

幸い、僕は記憶力だけは良かった。

メンバー構成、装備してる武器・防具、
各キャラのHP、覚えてた術。

これをノートに書いて
ひたすらモンスターと戦った。

地獄だったのが、父はレベルをめちゃくちゃ上げてから先に進むタイプだったこと。

HP600まで上げなきゃいけない…

母から言われる。

「デュタ、いつまでゲームやってんの!!!いい加減にしなさい!!!」

俺は言ってやりました。

「俺はゲームをやってるんじゃない!!!やらないとヤバいんだよ!!!」

そして何とか形にして金曜日の朝を迎えた。

父が帰ってきて、ゲームを始める。
気付かれないかドキドキしていた。

「デュタ」

はい。

「バーバラの強さこんなものだっけ?」

僕はすかさず言いました。

「そうだよ、HPも600あるし。
 お父さんのデータはこんな感じだったと思うよ」

なんとかやり過ごした、あの夜。

もしかしたら父は気付いていたのかもしれない。
それは昔すぎて確かめようもないけど

あの時、ゲーム部屋で感じた
あの重たい空気感を僕は忘れない。

あなたは、誰かのデータを消して
焦ったことはありますか?

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