県内世代ナンバー1、O君。
強豪C中のエース。
「あいつは上手い」
みんながそう言っていました。
当然、僕なんかが勝てる相手じゃない。
トーナメント表を見たときは、さすがに固まりました。
1回戦
Mデュタ vs O君
普通なら絶望する場面です。
でも、そのときの僕の本音は違いました。
「ラッキー!!!」
なぜか、めちゃくちゃ嬉しかったんです。
理由はシンプルで、
“絶対に勝てない相手”だったから。
同じくらいの実力の相手だと、
顧問やコーチに「絶対勝てよ」と言われる。
あのプレッシャーが、正直しんどかった。
でも今回は違う。
誰も何も言ってこない。
期待もされていない。
それが、ものすごく気楽でした。
だから強くなれないんですけどね(笑)
とはいえ、まったく通用しないのも悔しい。
当時は21点制だったので、
1点や2点で終わるのはさすがに恥ずかしい。
2階席からチームメイトの声が飛んできます。
「デュター!Oに勝ったら焼肉奢るぞー!(笑)」
勝てないと分かっているからこその軽口。
でも、それくらいの空気がちょうどよかった。
「サッ!」(サーブ前の掛け声)
僕にできることは限られていました。
サーブをネット際に出して、
ツッツキで返ってきたボールをドライブ。
それをストレートに打ち抜く。
様子見なんてしている余裕はない。
最初から全力でいくしかない。
予定通り、ツッツキが返ってきた。
「よし、ここだ」
ストレートにドライブを打ち込む。
コンッ!!!
当たり前のように、カウンターで返ってきました。
僕のドライブは、いわゆる“打ち頃のボール”。
回転もスピードも中途半端。
O君にとっては、ただのチャンスボールでした。
点はほとんど取れない。
取れたとしても、それは相手のミス。
そして、ついにチャンスが来ます。
浮いたボール。
「よっしゃ、スマッシュ!!!」
――のはずが。
それすらもカウンター。
正直、意味がわかりませんでした。
「え?スマッシュって返せるの?」
今なら、
張本智和 や
水谷隼 のプレーを見て、
そういう世界もあると分かります。
でも当時の僕には、衝撃でした。
試合結果は正確には覚えていませんが、
8点か9点くらいは取れた気がします。
もちろん、1セットも取れずに完敗。
それでもはっきりと分かったことがあります。
「これが、県No.1の実力か」
圧倒的な差を前にして、
“本物”を知った瞬間でした。
次回はO君と戦った、その後の話を書きます。


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