H山の頂上ノートを、僕は今でも覚えている

青春列伝

KとS君と仲良くなって、
よく3人で話してたあの頃。

あの頃、まだ僕は免許を持っていなかった。

S君はよく車で連れ出してくれたよね。

ちょっと高い山あったんだ。

「ねぇS君、あの山なんて言うの?」

「あれはねH山って言うんだよ」

H山か、登ってみたいな。

ねぇ、S君良かったら登らない?

う~んと少し悩んで
「いいよ」と言ってくれた。

よっぽどイヤじゃなければ
大体受け入れてくれるから
僕はS君が好きなのだ。

すごい昔のことで
しかも一度しか登ってないから
記憶も曖昧なんだけど

最初は結構なだらかだったと思うの。

でね、忘れもしない。
急に勾配がきつくなって
岩がゴツゴツした道になってさ

めっちゃ険しかったんだよね。

正直、引き返したい気持ちもあったんだけど
言い出しっぺ僕だし

ここまで来たら頂上に行きたい気持ちもあって

S君も僕もはぁはぁ言いながら
根性で登り切ったよね。

でさ、登り切った頂上で見た景色が忘れられないの。

一面、山と森がぶわぁーって広がってて

低い雲が下にあって

ちょっと大げさだけど
天空にでも来たのかななんて思ったりして。

そしてなぜこのこと憶えてるかって言うと
頂上にノートがあったの。

記念に一言、登山者が書くノートが。

僕、そこに

「どーにか登ったぞ!こんちくしょー!」

みたいなこと書いたんだよね。

20年以上経つけど、あのノートまだあるかな?
もし、もしもだよ、そのノートを見ることができて

僕が書いた文字を読むことができたなら
僕は泣いてしまうかもしれない。

結構高い山だったから、
下山したら夕方過ぎてたんだよなぁ。

S君、覚えてますか。

僕は今でも覚えています。

H山の頂上に置かれていた、あの一冊のノートを。

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